研究クラスター | 日本資本主義の成熟と危機 | |
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研究概要 | 本共同研究は、日本型資本主義に対する歴史的点検と社会的構造変動の分析を通して現代社会の懸案と変化の方向を模索する新たな問題意識と研究課題を導き出し、代案秩序を具体的に提示するよう努力する。 2019年7月韓国に経済報復を断行した日本は、2019年 四半期 GDP –6.3%(年率換算値)の景気後退に直面した。コロナ19によりグローバル経済指標が悪化する中、2020年4月7日に安倍総理は日本経済が“戦後最大の危機”であることを強調し、GDPの20%に該当する108兆円規模の景気テコ入れ政策を発表した。しかし、日本の危機は景気停滞や防疫システムの機能不全に限られるものではない。 明治維新後、日本はアジアの近代化・世界化の先駆者として戦後には世界2位の経済大国に成長した。しかし、第一次安倍内閣が発足した2006年当時から内閣府の戦略会議では、“アジアにおいて日本が唯一の巨人である時代は終わったこと”を認めた。続いて2010年、中国の浮上により日本は世界3位の経済大国に後退した。日本の持続的な停滞危機を予想する言説は、韓国外でもたびたび提起される。日本の製造業の没落を予見するデービッド・アトキンソンの『日本人の勝算』は日本アマゾン書店でベストセラー1位を記録した。 韓国社会で報道される日本は、人口減少と福祉ジレンマに陥り、社会的活力を失っている姿として現れている。21世紀の歴史創造に必要な新しい思想と文化的実践を日本に期待しづらい雰囲気であることも事実である。単純に過去史の問題に対する日本政府の頑固な態度と歴史修正主義の流れだけが問題であるわけではない。コロナ19の影響により在宅勤務とオンライン教育が実施される中で、日本社会はアナログ時代の書類行政および市民社会の自粛雰囲気と合わさって、停滞する姿を見せた。しかし、誰も日本の底力を簡単に否定することはできないだろう。 コロナ19後、グローバル経済秩序の地軸変化までも予測されている現実で危機と新たな変化は、すべての‘役目’となる。 経済大国日本が経験してきた低成長と福祉問題、少子高齢化、単身世帯の増加とうつ病・自殺率の増加、社会的格差と多様性の衝突など、様々な社会的な矛盾は韓国社会が解かなければならない同時代の課題でもある。日本に押し寄せた問題を解く新しい解法を我々が共に導き出せなければ、大韓民国と世界の未来も楽観することは難しいだろう。 |
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研究テーマ | (1) 資本主義の成長と衰退、社会的矛盾と成熟の相関関係、社会的危機と科学技術文化の進歩に対する認識と対応、社会変容のための各界の活動を新たな問題意識で診断し、分析する。新たな問題意識とは、未来秩序を率いる人間観と社会観を導き出し、提示しようとする努力を含む。 (2) 戦後日本社会の変化をあらわす象徴的現象および症候を整理し、それをまず日本社会内部の流動性や対応力の次元で一次的に分析する。二次的には日本の現状を同時代の韓国社会の視点で再解釈し、共同の未来と新しい関係性を導き出す次元で代案を新しく展望する。 (3) 1955年戦後復興の後、日本の高度成長とその後の歴史的変化を各分野で網羅し、歴史的総整理のための新しい視角と点検分野を議論する。そして2段階で2000年代後の変化様相と変化方向を眺望する。 (4) 少子高齢化、AIロボット時代が展開される同時代の変化に対応し、日本の企業及び経済界の活動方向、地域社会と文化産業分野の政策、企業福祉と社会福祉の懸案、災害と防疫などの問題を点検し、示唆点および代案を模索する。 (5) 詳細な研究分野は、各研究者の問題意識と研究テーマを中心に討議し、決定する。 |
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研究責任者 | 趙寛子 (ソウル大学 日本研究所) | 日本型資本主義の人間観と道徳教育 |
共同研究員 | 徐東周 (ソウル大学 日本研究所) | 現代日本資本主義の転換と現代思想の挑戦:柄谷行人のNew Association Movementを中心に |
朴承賢 (ソウル大学 日本研究所) | 阪神大震災後の神戸市長田地域25年の都市再建と地域再生 | |
呂寅満 (江陵原州大学 国際通商学科) | 日本式経営の再考 | |
権肅寅 (ソウル大学 人類学科) | ‘日本型福祉国家’の登場と変容の中の家族と介護 | |
金銀惠 (釜山大学 社会学科) | 1975-95年東京圏郊外化の形成と衰退を超えて | |
吳垠姃 (翰林大学 日本学研究所) | 災害資本主義とコモンズ: 福島原発事故後における富岡町の復興と環境再生 | |
金普慶 (高麗大学日本研究センター) | 1980年代の日本映画産業と’アイドル映画‘というジャンル | |
助手 | 金旻(ソウル大学 東洋史学科 博士課程) |
研究クラスター | 日本民主主義の成熟と危機 | |
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研究概要 | 昨今、韓国社会において日本社会を見つめる新たな基準は、‘民主主義’である。大統領弾劾後の韓国とは違った日本の政治社会的雰囲気が日本のマスメディアにおける韓国政治に対する報道、嫌韓的雰囲気の高まりなどを通して知られるようになり、このような雰囲気は一層加速した。特に最近の安倍2次内閣の保守的な歩み、2020オリンピックとコロナウイルス事態に対する態度について日本社会内部からも批判が高まりつつある状況で、韓国社会で日本に対する視角は最近急速に変化している。特に具体的には、韓国とは異なるアプローチで進行している日本政府の新種コロナ対策、フェミニズムのイシューから時代に遅れをとっているように見受けられる判例や政策などを事例に、日本の‘民主主義’に対する懐疑が高まっているのが現実である。 興味深いのは、まさに同一の基準を日本においても韓国に対して提起しているという点である。朴槿恵大統領弾劾とろうそくデモ後に構成された現政府が手続き的正統性が欠如しているという指摘は、持続的に日本国内で提起されてきた。同時に日本で中国との関係を重視する現政府の性向に対して、米国を軸にした自由市場経済/民主主義という共通の理念を共有しているという点について疑問を提起する場合も増えてきている。すなわち、これまで以上に日韓関係、そして日本の国内外で‘民主主義’が問題視され、議論されている状況なのである。 一方で、このような2010年代中盤後の‘民主主義’をめぐる日韓間の論争構図とは別に日本内部では依然として‘戦後民主主義’に対する議論が進行中にある。本研究所のHK+アジェンダが提示するように、戦後民主主義が政治領域にとどまるのではなく、戦後日本社会を根本的に位置付け、性格付けてきた思想ー体制であると言うならば、これは戦後日本社会を総括する革新的なキーワードとして議論する必要がある。 民主主義が各社会ごとに多様な形態を帯びているという点を前提にするならば、日本は東アジアで‘日本型民主主義’を実践し、発展させてきた貴重な事例として日本人の自己認識においても民主主義は重要な部分を占めている。また、まさにこのような状況であるため、日本社会の民主主義が成熟するにつれて生じた新たな課題を再確認し、危機がどこから出発しているのか、その根源を調べる必要がある。民主主義は生きている思想であり思想、生活の態度として持続的に変化して、その内容を更新しなければならないからである。同時にこれを通して、韓国を基準に日本を批判するのではなく、日本の‘民主主義’をめぐる近代後の歴史的過程をもとにこの過程を率いてきた日本社会の底力をもう一度考察して見ることを本企画研究のの重要な目的とする。 |
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研究責任者 | 金孝眞 (ソウル大学 日本研究所) | ‘表現の自由’をどのように守るかー愛知トリエンナーレ2019<表現の不自由展>の事例を通して |
共同研究員 | 南基正(ソウル大学 日本研究所) | コロナ19と’日本型‘民主主義 ポストコロナ時代の国家と市民社会 |
李垠庚(ソウル大学 日本研究所) | 再び、家族!家族?:現代日本保守化と’家族‘理念をめぐる挑戦と対応 | |
鄭知喜(ソウル大学 日本研究所) | 日本メディアと戦後民主主義:’不偏不党‘と’客観報道‘原則の冷戦史的再考 | |
孫晳衣(ソウル大学 日本研究所) | 自民党の’新優位体制‘形成と日本政治の右傾化 | |
韓程善(高麗大学 国際学部) | 日本の冷戦民主主義と市民社会 | |
李政桓(ソウル大学 政治外交学部) | 利益誘導政治の変容とNPO政策参加の政治的性格 | |
金志英(ソウル大学 日本研究所) | 沖縄から見つめた戦後日本の‘民主主義’ | |
助手 | 田村史記 (ソウル大学 地理学科 博士課程) |